会長 廣瀬 明夫
昨年に新型コロナウィルス感染症が5類に移行後、社会の動きは日に日に落ち着きを取り戻しております。しかしながら、ウクライナ情勢、中東情勢、中国経済の陰り、そして円安によるエネルギー価格や物価の高騰など、先行きに予断を許さない状況です。
当協会の事業は、一昨年度5%以上の減となった溶接技能試験の受験者数が、新規受験者を中心にコロナ禍前の状況に戻りつつあります。溶接技術講習会や溶接管理技術者講習会では、コロナ禍前の受講者数を上回っており、協会をとりまく産業、経済の回復を感じる次第です。
コロナ禍においても皆様のご理解を得て継続してきました「全国軽金属溶接技術競技会」は、昨年10月に第49回大会を開催し、全国からの参加者53名に日ごろ磨いた技を競う雄姿を見せていただきました。今年度は、第50回の節目の大会になります。
2024年度は新中期計画2年目、行動の年です。活動目標を「市場の拡大」、「技術・技能の高度化」そして「持続可能な協会運営」とし、「DX」と「構造設計での接合ニーズの明確化」を手段として目標達成を目指していきます。
「DX」については、技術関連委員会でデータサイエンスによる協会の重要課題のブレークスルーを鋭意進めています。今年度は、基礎造りのため専門家を招いた勉強会などを進めながら、データサイエンスの適用で解決する課題を具体化して、実行につなげていきます。このような活動を重ねて「DX基盤」をもった「軽金属接合構造技術の中核」を目指します。
「構造設計での接合ニーズの明確化」は、市場拡大、技術技能の高度化の鍵と考えています。2021年度より、カーボンニュートラル社会での構造ニーズの変化を反映した接合技術ロードマップの改訂を進めており、協会誌「軽金属溶接」やホームページで発表していきます。改訂版では、接合技術の議論のために、カーボンニュートラル社会で必要になる設備、装置、構造製品について考察しました。それをもとに、アルミニウムの特徴を活かせる構造物について議論をすすめました。その成果は、アルミニウム構造技術の鍵となる、接合技術について産学活動の「道しるべ」になるものと期待しています。
そして、「持続可能な協会運営」も将来に向け重要です。昨年度は事務処理の「デジタル化」で協会業務の効率化を進めました。2023年10月施行のインボイス制度に対しては、販売管理システムの開発導入を機に,当会からの請求書発行後にお振込み頂く様、皆様に多大なご協力を頂いたお蔭をもちまして、無事移行を完了できました。今年度は、当協会ホームページにアクセス頂く皆様の利便性を向上させるべく、刷新を進めます。
本年度、我が国の産業や経済がコロナ禍を乗り越え、回復から成長基調になることが期待されています。一方で、まだまだ予断を許さない社会情勢です。気持ちを緩めることなく、「軽金属接合技術の中核」となるべく協会運営を進め、協会宣言の「幸せのくにづくり」に貢献する所存です。